10月17日,石垣市議会にて,辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票条例案に反対する意見書(案)が賛成多数で可決された。
 当会は同意見書に対し,強く遺憾の意を表するとともに,県民投票条例案に反対する同市議会議員との対話を求める。また,沖縄県議会で県民投票条例が制定された場合には,石垣市長は,知事から受託された事務(有権者名簿の調製,投票及び開票事務等)を処理し,県民投票の実施に協力するよう要請する。

 憲法はこの国の民主制度の根幹をなすものとして地方自治制度を保障している。地方自治法はこの制度をよりよく機能させるために,間接民主制を補完するものとして,直接民主主義の思想に基づき条例制定を求める直接請求制度を採用している。
 当会は,この憲法と地方自治法に基づき,県民投票条例制定を求める運動を初め,2ヶ月間で,法定必要署名数2万3171筆の4倍を上回る有効署名9万2848筆(署名総数は10万950筆)を集め,9月5日に沖縄県に県民投票条例制定を求める直接請求を行った。石垣市においても,要件となる773筆(有権者の1/50)の3倍に迫る有効署名2,260筆(署名総数2,428筆)を集めた。

 石垣市議会の上記意見書は,県民投票について「米軍普天間基地移設計画の主眼である危険性の除去について県民の意思を示すものではない」と批判している。
 しかし、普天間基地の危険性除去は日米両政府においても共通認識となっており,また,県民の中においても異論がないものである。県民の中で意見が分かれているのは,普天間基地の危険性除去の方法,すなわち,辺野古沿岸部埋め立てによる米軍基地建設の是非である。
 それゆえに,当会は,辺野古沿岸部の埋め立てによる米軍基地建設の賛否を問う県民投票の必要性を訴えているものである。
 県民の民意は,これまでの知事選挙及び国政選挙において何度となく示されてきたと受け止められてきた。しかし,日本政府は,地方自治尊重という憲法原理を軽んじ,沖縄県民の民意を重く受け止めていない。また,司法の場においても,残念ながらこれと異なる見解が示されている。2016年9月16日の違法確認訴訟判決(福岡高裁那覇支部)は,各種選挙結果からも沖縄の民意には、「普天間飛行場その他の基地負担軽減を求める民意」と「辺野古新基地建設反対の民意」が存在するとして,民意を相対化し,後者の民意が明確ではないとの判断を示している。
 このような状況の下では,シングルイシューで問う県民投票に基づき県民の意思を明確にすることは社会的にも,法的にも極めて重要なものとなっている。

 また,上記意見書は,「『辺野古県民投票の会』…は,米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に反対の世論形成,沖縄県知事の埋め立て承認撤回を後押しし,その後の国との裁判を見据え,有利に運ぶ理由を整える事を目的とする内容になって」いるとして県民投票を批判している。

 しかし,県民投票制度は,特定の施策につき,直接民主主義の思想に基づき県民の意思を問うものであり,それ自体参政権の行使であり政治的行動である。上記意見書は,県民投票が特定の立場に偏したものであるとして,これを批判するものと理解されるが,県民投票それ自体は,県民の意思,すなわち,賛成であれ,反対であれ,一人一人の意思を表明するための投票を求めるものであり,制度それ自体中立的なものであり,県民投票の管理・執行それ自体公平中立的立場から実施されなければならないものである。
 当会は,虚偽の事実に基づくものでない限り,広く賛成・反対双方の情報が提供され,自由な議論が行われ,県民一人一人が改めてこの問題を深く考え,意見を表明することができる県民投票の機会としたいと考えている。県民投票は,住民自治を成熟させるものであり,金銭には換えられない価値を持つものと考えている。

 さらに,上記意見書は2017年第4回石垣市議会での決議に基づき,「国防や安全保障は国全体に影響を及ぼす。一自治体の住民投票はそぐわない」としている。
 国防や安全保障問題が国民全体の問題として議論されることが重要であることはいうまでもないことである。しかし,この国において,米軍基地問題が国民的に真剣に議論されたことがあるか否かと問うと,はなはだ疑問といわざるを得ない。また,国防や安全保障問題を国民全体の問題として議論する場合においても,地域住民の民意を無視して,一部の地域住民にこれを強制してはならない。憲法が保障する地方自治制度の尊重原理に基づき,国策においても地域住民の意思が十分に尊重されなければならない。沖縄県における米軍基地問題は,すでに指摘されてきたように「構造的差別」と批判されるほどに不合理なものとなっており,そのいびつさは際立ったものとなっている。
 このような状況下の沖縄県において行われる県民投票は,国防や安全保障における国民的議論を促す嚆矢となるものでもあり,沖縄県民の明確な意思を全国に示す意義ある機会となるものである。
 石垣市議会の上記意見書採択は,以上述べた県民投票の意義を十分に理解しないまま漫然と数の力で採択されたものといわざるを得ない。

 当会は,石垣市議会の採択に遺憾の意を表するとともに,改めて県民投票条例案に反対する同市議会議員との対話を求めるものである。
 また,石垣市長に対しては,県民投票条例が制定された場合,上記意見書採択に拘束されることなく,法令に基づき,沖縄県から委託された事務につき,誠実に管理・執行し,県民投票の実施に協力するよう強く求めるものである。

2018年10月24日
「辺野古」県民投票の会
代表 元山 仁士郎